ו
ワウ
Waw / Vav
字形の由来
ワウの字形は、古代フェニキア文字の「釘」または「鉤(かぎ)」に由来します。縦棒に小さな頭部を持つ釘のような形がやがてヘブライ文字の ו になりました。ギリシア文字の「ウプシロン(Υ)」やラテン文字の「F」「U」「V」「W」「Y」もこの文字と同じ起源を持ちます。
ワウは旧約聖書において他のどの文字とも異なる特別な役割を担います。子音 /v/ を表すほか、母音字としてホレム・ワウ(וֹ / ō)・シュルク(וּ / û)にも使われます。そして最も重要なのが、単語の先頭に付いて「そして(וְ)」を意味する接続詞、および動詞に付いて時制を転換する「ワウ連続法(Waw-Consecutive)」としての機能です。旧約聖書の物語文体はこのワウ連続法によって成り立っており、 ו は聖書ヘブライ語で最も頻繁に登場する文字・語のひとつです。
なお、ワウを語根の第1文字として持つ独立した単語は旧約聖書では非常に少なく、以下では単語よりも文法機能の紹介を中心に取り上げます。
聖書に登場する表現・単語
וְ
Ve-
そして、〜と、また(接続詞)
後続の語に接頭辞として付く接続詞で、旧約聖書全体で数万回登場するヘブライ語最頻出の語。創世記1章では「夕があり、朝があった(וַיְהִי־עֶרֶב וַיְהִי־בֹקֶר)」と各日の区切りを告げる繰り返し表現にも使われる。後続の語の音によって וְ / וִ / וּ と形が変わる。
וַיְהִי
Vayehi
こうして〜あった、そのとき(ワウ連続法)
ワウ連続法+ הָיָה(ある)の過去形。物語の冒頭・場面転換を告げる定型句。「すると光があった(וַיְהִי אוֹר)」(創世記1:3)をはじめ、旧約聖書の物語文体を特徴づける語形。英語聖書の "And it came to pass…" に相当する。
וַיֹּאמֶר
Vayomer
そして言われた(ワウ連続法)
ワウ連続法+ אָמַר(言う)の過去形。「神は言われた(וַיֹּאמֶר אֱלֹהִים)」(創世記1:3)をはじめ、旧約聖書で神や人物が語る場面を導く最も頻出する動詞形。旧約聖書の物語を読むうえで避けて通れない語形。
וָוִים
Wawim
釘、鉤(複数形)
ワウという文字名の語源でもある「釘」「鉤」の複数形。幕屋の建設記事(出エジプト26〜27章)に登場し、幕の柱をつなぐ銀・金の鉤として具体的に記述されている。ワウを語根の第1文字として持つ、旧約聖書中の数少ない独立した単語のひとつ。
聖書の引用は特記のない限り、聖書 新共同訳(日本聖書協会)による。