בוֹ
ホレム・ワウ
Holam Waw · ô
記号の由来と用法
ホレム・ワウ(חֹלֶם וָו)は、ヴァウ(ו)の上部左肩に点を置いた וֹ という形で長母音「オー(ô)」を表す。ヴァウは母字(マーテル・レクティオニス)として機能し、発音されずに母音の長さを示す。前ページで学んだホレム(ֹ、点のみ)は同じ「オー」をヴァウなしで書いたものであり、どちらも音価は同じ長母音 ô だが、ホレム・ワウは書き方がより明示的である。
ホレム・ワウはヘブライ語の中で「オー」音を持つ語に広く分布し、シュルク(וּ)と並ぶ「ヴァウ系長母音」の2種のうちのひとつである。שָׁלוֹם(シャローム)・יוֹם(ヨーム)・קוֹל(コール)など礼拝・日常・自然にまたがる重要語が多く、ヘブライ語学習の初期から繰り返し出会う記号である。これで16種の母音記号をすべて学んだことになる。短母音・長母音・最短母音を整理し直し、聖書テキストの読解に挑戦してみよう。
聖書に登場する単語
שָׁלוֹם
Shalom
平和、平安、完全な安寧
「完全・健全・安寧」を根とする名詞で、単なる「戦争のない状態」を超えた全人格的な豊かさと調和を意味する。民数記6:24-26の祭司の祝福「主があなたを祝福し、あなたを守られるように。主が御顔を向けてあなたを照らし あなたに恵みを与えられるように。主が御顔をあなたに向けて あなたに平安(שָׁלוֹם)を賜るように」は礼拝で今日も読まれる。挨拶語「シャローム」としても世界的に知られ、語中の לוֹ にホレム・ワウが現れる。
אוֹר
Or
光
創造物語の最初に神が言葉で呼び出したもの。創世記1:3「神は言われた。『יְהִי אוֹר(光あれ)。』こうして、光があった」として聖書全体の第一の被造物として登場する。太陽・月・星が4日目に作られるのに対し、光は1日目であるため、この「光」は神の栄光そのものを象徴するとも解釈される。語頭の אוֹ がホレム・ワウのパターンで「オー」と読む。
יוֹם
Yom
日、昼、時
ヘブライ語で「一日・昼間・時代・特定の日」を広く指す名詞。創世記1章では「夕べがあり、朝があった。第一の日(יוֹם אֶחָד)」の繰り返しで天地創造の各日を区切り、旧約全体で最頻出名詞のひとつ。「主の日(יוֹם יְהוָה)」という表現はアモス・イザヤ・ヨエルなど多くの預言書に登場し、神の審判と救いの日を指す預言的専門用語ともなっている。語頭の יוֹ にホレム・ワウが現れる。
קוֹל
Qol
声、音、雷
「声・音・響き」を広く指す名詞で、神の語りかけを表す神学的核心語のひとつ。シナイ山での律法授与では「雷鳴(קֹלוֹת)と稲妻と濃い雲が山の上にあり」(出エジプト記19:16)と神顕現の音が強調される。列王記上19:12のエリヤの場面では嵐や地震の後に「かすかな細い声(קוֹל דְּמָמָה דַקָּה)」として神の声が現れ、静かな内なる語りかけの象徴として有名。語頭の קוֹ にホレム・ワウ。
עוֹלָם
Olam
永遠、世々、この世
「遠い過去・遠い未来・永続するもの」を指す語で、神の属性を表す際に用いられる。詩編90:2「山が生まれる前から、大地と世界を産み出す前から、世々とこしえに、あなたは神(מֵעוֹלָם עַד עוֹלָם אַתָּה אֵל)」は神の永遠性の宣言として旧約屈指の名句。「エル・オラム(אֵל עוֹלָם、永遠の神)」はアブラハムがベエル・シェバで神を呼んだ名(創世記21:33)でもある。語頭の עוֹ にホレム・ワウが現れる。
聖書の引用は特記のない限り、聖書 新共同訳(日本聖書協会)による。